「食」にかかわるさまざまな仕事をする人に、「食べること」をテーマに詩やエッセイを寄せてもらいます。
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焚火をかこんで 話すこと
日が落ちて
そろそろ月も出るころ
人があつまる
始まるのはお話の時間
こわい話やわらい話、それからむかしの話に
これからの話も
薪を積んで、火をおこす
炎があがり、あたたかくなる
パチパチ炭のはぜる音
モクモク煙があがってゆく
それじゃ、ごはんができるまで
焚火をかこんで話そうか
焚火のあとの ごはんのこと
月が空をわたるころ
夜がやってくる
ながい話がおわったら
みんなおなかが空いたころ
ぐつぐつお芋が煮えている
ことことお豆がゆだってる
お米の炊ける匂いがしたら
ごはんかこんで、いただきます。
付記
たくさんの嬉しさに喜び、それから悲しみに辛いことも、私たちは色々な経験をして毎日を生きています。経験から沸き起こる体いっぱいの感情を、私は毎日のごはんの時間に食卓を囲む人と、分かち合います。ときには大切な人と、夜の静けさの中で焚き火を囲みながら、分かち合います。
言葉にしなくてもいいと思うのです。でも、詩をつぶやくように言葉にしてみると、言葉よりもっともっと深い分かち合いが、その場には生まれると思うのです。
プロフィール
どい・ちなつ 料理家。兵庫県・淡路島在住。“こころとからだにやさしい” をテーマにワークショップや料理教室「季節の台所」を主宰。野山の植物、自然農を学び、野菜やハーブを栽培。「心に風」としても活動。著書に『焚火かこんで、ごはんかこんで』(サウダージ・ブックス)他。
Instagram: www.instagram.com/windformind/
編集部註
2篇の詩作品は、どいちなつさんの著書『焚火かこんで、ごはんかこんで』(サウダージ・ブックス、2013年)より転載しました。
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