Saudade Books2019年6月9日離陸と着陸のあいだで 旅本読書記録 #5(神田桂一)井上章一『つくられた桂離宮神話』 好きな評論家に井上章一がいる。彼は建築史家だが、最近では『京都ぎらい』が売れたことで、京都に関する評論家として一般的には知られているかもしれない。 僕が井上を初めて知ったのは、関西ローカルのワイドショー番組のコメンテーターとしてだ。よくしゃ...
Saudade Books2019年4月1日離陸と着陸のあいだで 旅本読書記録 #4(神田桂一)沢木耕太郎著『深夜特急』 ユーラシア大陸をバスで横断した沢木耕太郎著『深夜特急』(新潮文庫)は、沢木の仕事のなかで、最も人口に膾炙した作品であるために、沢木=旅の人というイメージが、世間一般に植え付けられてしまった。 しかし、これは沢木にとって、ある種の不幸なことであると僕...
Saudade Books2019年3月1日離陸と着陸のあいだで 旅本読書記録 #3(神田桂一)小林紀晴『アジアン・ジャパニーズ』 旅と言えば、「自分探し」という懐かしい言葉がつきまとう。『アジアン・ジャパニーズ』(新潮文庫、2004年[情報センター出版局、1995年])も、今から考えると、その象徴のような本と受け止めることができるだろう。90年代に流行した「自分探し...
Saudade Books2018年12月2日離陸と着陸のあいだで 旅本読書記録 #2(神田桂一)伊丹十三『ヨーロッパ退屈日記』 ヨーロッパは退屈だ。僕は過去に2回、ヨーロッパに行ったことがある。しかし、2回とも見事に空振りした。最初に行ったのは、確か2007年くらいの冬、9日間の予定でフランスとオランダだった。それまで、アジアには行ったことはあったが、今回は初めてのヨ...
Saudade Books2018年11月1日離陸と着陸のあいだで 旅本読書記録 #1(神田桂一)内堀弘『ボン書店の幻——モダニズム出版社の光と影』 「旅の本」といっても、その定義は曖昧で、紀行文だけに絞ればいいというものでもない。まるで旅をしているかのような、グルーヴ感のあるような本、というのもあるし、旅の醍醐味でもある、出会いや別れ、価値観の刷新、新しい発見などを味...